掲載情報 2006.12 :クローズアップ人・街・夢(情報誌ぱせり)

“やらない後悔”よりも“やる後悔”を選んだ41歳の挑戦

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掲載記事

「接客しない」結婚・披露宴の総合案内所「ブライダル図書館」に感じた大きな未来-
“やらない後悔”よりも“やる後悔”を選んだ41歳の挑戦
加東市 『ブライダル図書館(ブライダルサロン寿本社1F)館長 山上尚洋
-41歳「新人」。ブライダル産業へ!-

山上尚洋さんの父親は、美容業界のディーラー(販売)を営んでいた。長男の山上さんも また、大阪の地で修行の後、父の後を継ぎ、足かけ21年の営業経験を積んだ。
婚礼行事に密接な美容業界を影から支えていく中、両家の親同士が主体に進む婚礼から、当人同士が主体となる婚礼へと、急速に多様化していくブライダル業界に興味は尽きず、徐々にディーラーの仕事よりも、ブライダルに直接携わる仕事がしたいと想いが膨らんだ。
折しも、新たなビジネスモデルとして全国で注目の『ブライダル図書館』に、ブライダルサロン寿が着手。2005年秋、兵庫県下初の『ブライダル図書館・姫路店』オープン。
その成功に続き、2006年春、『ブライダル図書館・加東市店』オープンの運びとなり、その館長をやらないか、と誘われた。時に41歳、一家の大黒柱として悩みもしたが、「やらない後悔よりも、やる後悔を選びたい」と転職を決意。周囲の人々を驚かせたが、何よりも理解してくれたのは、妻であり家族。愛する家族のためにも、この新規事業を、兵庫県下に認知されたいと日々心を砕き、身を挺する。イベント、挨拶回り、DM配り…、ひとつ一つの仕事は地道だが、「元来打たれ強い性格だし、毎日どう展開していこうかと試行錯誤できるのがいい」と、新たな船出を楽しんでいる。
-『業界本位』から『消費者本位』ヘ -
個性重視の昨今、結婚に何を求めるかは自由とはいえ、結婚式という「ケジメの儀式」を 示すことは確かに、個々が大人としての責任感を醸成していく役割を果たしてきた。
山上さん自身は、28歳の時、昔ながらの「出立ち」と呼ばれる地方固有の婚礼儀式を経験し、パートナーと喧嘩もして、ひとつ一つ問題を解決してやっと結婚式を迎えた。
「今にして思えば、その手間もまた夫婦の歴史の第一歩。良かったと思える反面、業者の言うがままの当時の『業界本位』の姿勢が、今の若年層の結婚離れの一因になったのでは」と分析する。
山上さんが惹かれた『ブライダル図書館』とは、数多くのブライダル情報誌を揃え、カップルが漫画喫茶感覚で効率的に情報収集できる空間で、利用料金は『無料』、館員は『接客しない』ことが原則。館員は別室に常駐し、来館者がアドバイスを必要とする場合のみ、より具体的な質問に応じるスタイルの図書館。 個々のカップルの希望に相応しい式場・ホテルなどの紹介もするが、そこにバックマージン(仲介料)などは一切発生しない。どの式場・ホテルにも肩入れせず、あくまでも消費者サイドで『情報提供』するためだ。
個の利益追求を完全に切り離すことで、逆に消費者からの強い信頼が寄せられ、ブライダル産業全体の集客にも結びつくと言う。あくまでも『消費者本位』。そこに、山上さんは「未来のブライダルの展望を感じた」と話す。
「結婚を意識し始めたカップルが、誰に臆することなく、知りたい情報を知りたいだけ収
集できる環境を提供することが、当館の役割。結果が、結婚資金0円のウェディングプランでも、写真だけの結婚式でもいいんです。人生の節目をきちんとつけたいと考えるカップルが一組でも増えてくださることが、ブライダル業界だけでなく地域コミュニティも豊かになると考えています」。 見つめる未来に、少子化や地域秩序の改善といった大きな命題も掲げるビジネススタイルは、確かに、山上さんが残りの人生を賭けた魅力に溢れている。
-感謝・縁・喜び-
果たして、同館のオープン10ヶ月という浅い月日の中にも、山上さんや同館スタッフの親身なアドバイスにより、数組のカップルが無事挙式し夫婦となった。
「"ありがとう"。挙式後のカップルにそう言ってもらえた時は最高に嬉しい」と、消費者とダイレクトにコミュニケーションできる喜びを語る山上さん。
「この仕事に巡り会えた縁、この仕事を支えてくれる多くの人々、平凡ですが、心から、すべての方に感謝しています」と。
『結婚式と消費者の隔たりを少しでも小さくー』。山丘さんの地道な挑戦は、まだ始まったばかりだ。

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